ショールーム:Cayenne Electric
カイエンを電気駆動にすることで、ポルシェは史上最もパワフルな市販ポルシェをこの世に送り出し、SUVセグメントにおける新しいマイルストーンを達成した。
「ポルシェの厳しい品質基準を満たし、ポルシェと堂々と名を冠することができるオフロード車なら、それはきっと売れるだろう」。スポーツカーブランドの創始者であるフェリー・ポルシェが1989年に遺したこの言葉は、彼の卓抜した先見の明を今に伝える逸話のひとつである。1998年、ポルシェは「コロラド」と名づけられたプロジェクトの一環としてSUVの開発に乗り出した。翌年には新生産拠点・ライプツィヒ工場の建設を決定し、現地での生産体制を整えた2002年には、初代カイエンが世界に披露されるに至る。フェリーのあの言葉から13年を経て、彼のビジョンは現実となった。発表を前に、「ポルシェがSUVを?」「それではポルシェの本質が失われるのでは?」
と懐疑的な声も多かった。だが、発売後8年間、年販目標の2万5,000台をはるかに超える約3万7,000台を出荷し、カイエンは市場の期待を覆して世界的な成功を収めた。
2010年、2代目カイエンにはハイブリッドモデルが追加された。2010年代以降、ポルシェは未来に向けて電気駆動への移行準備を着々と整えていく。2017年のハイブリッドをさらにパワーアップした第3世代カイエンのワールドプレミアで、ポルシェAGのCEOオリバー・ブルーメはこう語った。「このカイエンをもって、“ポルシェ伝説”をまったく新しい市場セグメントへと伝承していくことができました。2002年以来、ポルシェはSUVセグメントにベストセラーを送り出し、この市場の成長をリードしてきました。そしてカイエンはポルシェにとって、多くの新しい市場への扉を開いた特別なモデルでもあります」。そして2020年には100万台目のカイエンが出荷され、サクセスストーリーは延々と続いていく。そう、ポルシェとSUVが完璧なマッチであることはこんな風にもうずいぶん長いこと証明されているのだ。カイエンを家族向けのツーリングカー、堅牢なオフロード車、そしてポルシェらしい性能をしっかりと備えた極めてダイナミックなスポーツカーにしているのは、ポルシェが誇る技術的な幅の広さなのだろう。
そして今、カイエンは電気駆動のみの、BEVとして登場する。11月にワールドプレミアを迎えた新型カイエンエレクトリックには、まず2つのモデルバリエーションが用意されている。今回のレポートでは、このE-SUVをあらゆる視点から眺め、その強化されたデザインランゲージ、ハイパフォーマンス電気駆動システム、そして新しいドライバーエクスペリエンスを考察していく。
ショールーム‐第一印象
新型カイエンはべースモデルとターボモデルから登場する。ターボは、スーパースポーツカーの性能データを備えた、ポルシェ史上最もパワフルな市販車としてデビューすることとなる。これらの特性をより優れたデザインランゲージに変換すること、それがエクステリアデザインディレクターのペーター・ヴァルガと彼のチームの仕事だった。「カイエンは長い間、それ自体がブランドでした」とヴァルガは言う。「そのプロポーションは、エモーショナルな感情を表現しており、カイエンエレクトリックでは少し張り出したウイングなどでそれを強調しています」。しかし、全体としては、控えめさを大切にしてきたようだ。「全体に流れるスポーティなプロポーションにこのクルマのキャラクターを物語らせました」このE-SUVは、ポルシェらしいプロポーションとすっきりと洗練されたデザインが美しいクルマだ。それがどのように仕上がったのかは、ショールームで順次見ていこう。ぺーター・ヴァルガの印象は。「私にはまだ、カイエン・エレクトリックの性能を信じきれていない部分があります」。
ドライバーエクスペリエンス‐コンフォートもインディビジュアルに
カイエンは革新的な電気自動車であるのだから、インテリアでも最先端を行くものでなければならない。そのため、ドライビングエクスペリエンスを新たなレベルに引き上げる新しいコックピットが開発された。カイエンエレクトリックには、ポルシェ史上最大のディスプレイが搭載されている。そしてこれはアップデートも、自由自在にカスタマイズすることもできる。これら全てを見れば、デジタル化でも一切妥協などないポルシェの姿勢を感じることができる。
電気駆動‐スーパースポーツカーの性能
サーキットからストリートへ。これはカイエンエレクトリックにも当てはまるポルシェの原則だ。ここではフォーミュラEで得た経験が生かされている。そのおかげもあり、2002 年当時は誰も考えもしなかったような、最高出力850kW (1,156PS; Cayenne Turbo Electric: 電力消費量 複合(WLTP) 22.4 – 20.4 kWh/100 km, CO₂ 排出量 総合(WLTP) 0 g/km, CO₂ class A ) が達成された。当時のSUV としては驚異的な、スポーツカー顔負けのパフォーマンスを誇った2002 年のカイエンターボでは331kW (450PS) だったのだからどれほど大きな飛躍であるか想像がつくことだろう。性能データだけではない。充電、熱管理、そしてFormula Eレーシングカーの99X Electricから学んだエネルギー回生技術といった面においても、カイエンは技術を未来へとリードしている。未来へ前進するポルシェにおいて、カイエンエレクトリックが技術を先導しているのは道理に適ったことなのかもしれない。
スーパーカーの性能
記録値:カイエンターボエレクトリックは、ゼロから100km/hまでの加速を2.5秒、200km/hまでを7.4秒でこなし、そのトップスピードは260km/hだ。このパワフルな電気駆動パフォーマンスは、ローンチコントロールを作動させると最大850kW (1,156PS)のパワーと最大1,500Nmのトルクを発生する新開発のドライブシステムによって実現されている。
モダンなデザインランゲージ
進化:カイエンエレクトリックからは、ポルシェらしい優美なプロポーションと、すっきりと進化してきたデザインランゲージを見て取ることができる。ハイライトは、どっしりとしたワイド感を主張している低いボンネットと、すべての照明機能を1つのモジュールにまとめたフラットなマトリクスLEDヘッドライト(オプションでHDテクノロジー搭載可能)だ。ポルシェらしいパワーフルな輪郭、フェンダーとフライラインも美しい。
ドライバーエクスペリエンス
デジタル:センターコンソールにシームレスに統合された曲面OLEDパネル、フローディスプレイは、ポルシェ史上で最も大きいディスプレイだ。また、14.25インチのOLED技術を採用したインストルメント・クラスターと、助手席にオプション装備できる14.9インチのディスプレイも用意されている。ストリーミングやゲーム、AI支援のボイスパイロットは、車内でのデジタル体験を新次元へと導いていく。
インタラクティブ・インテリア
最先端の技術:デジタル操作の新しいコンセプト、ポルシェデジタルインタラクションは、ポルシェのドライバーエクスペリエンスをさらに向上させ、カスタムしやすく、大切な機能への素早いアクセスを可能にする。また今回、カイエンに初めてAR技術を搭載したヘッドアップディスプレイが採用され、車両の10メートル前方に87インチのスクリーンが投影される。
2つのモデルバリエーション
牽引力:フルEVのカイエンにはまず、2つのバージョンが用意されている。カイエンエレクトリック(バナジウムグレー・メタリック)とカイエンターボエレクトリック(ミスティックグリーン)だ。どちらも四輪駆動、装備に応じて最大3.5トンを牽引するパワーを備えている。BEVセグメントにおいて3.5トンはなんとも驚異的な数値だ。このE-SUVは既存のエンジン、ハイブリッドに続き駆動システムのラインナップを補完してくれる。
照明は気分次第
カスタマイズ可能:ポルシェ史上最も大きい面積のガラスルーフ、サンシャインコントロール機能付きパノラマサンルーフは開放的な空間を演出してくれる。新しいムードモードを使えばインテリアを気分や状況に合わせた体験空間に変えることができる。シート位置、調光、空調、サウンドプロファイル、ディスプレイ表示は、選択したプログラムに応じて調整される。
広々とした空間
新しいベンチマーク:全長4,985mm、幅1,980mm、高さ1,674mmとエンジンモデルと比較して、カイエンエレクトリックの全長は55mm伸びている。最大の違いは3,023mmのホイールベースだろう。ほぼ13cm長くなっている。後部座席にはこれまで以上に広いスペースと快適性が提供されている。
ポルシェならでは
プログレッシブ:キリリと際立つ3Dルックとアニメーショングラフィックが光るライトストリップやライトアップされたポルシェのレタリングなど、リアに散りばめられたディテールがモダンなデザインランゲージを語りかける。カイエンターボでは、ターボのための特別カラー“ターボナイト”でまとまったポルシェのエンブレム、軽合金ホイールのフロントフェイス、サイドウィンドウトリムなど、数々のディテールがコントラストを効かせている。
アクティブエアロダイナミクス
風の流れに乗って:空気抵抗係数が0.25のカイエンエレクトリックは、このクラスで最もエアロダイナミクスに優れたSUVのひとつである。アクティブエアロダイナミクスエレメントには、フロントセクションの可動式冷却エアフラップ、アダプティブルーフスポイラー、ターボ後部にあるエアロブレードが含まれる。エアロブレードはサイドエッジを延長し、空気の流れを改善する代物だ。エアロダイナミクスに磨きをかけたことで高速走行時の航続距離も伸びている。
長々とドライブ
長距離ランナー:BEVカイエン両モデルの心臓部には、熱管理最適化のために両面冷却が施された新開発の113kWh高電圧バッテリーが搭載されている。カイエン・エレクトリックの航続距離は642km、ターボでは623km(WLTP複合)。このE-SUVは長距離ドライブを楽しむことができるクルマでもある。
パワフルな充電性能
休憩も早く切り上げ:800ボルト技術のおかげで、カイエンエレクトリックは最大400kWのDC充電が可能だ。1 16分2未満で10%から80%までの充電量を吸い込み、10分3の充電で325km(カイエン)/315km(カイエンターボ)の航続距離に十分な電力がチャージされる。カイエンエレクトリックはまた、オプションで最大11kWのワイヤレス充電をサポートする最初のポルシェでもある。
ディテールまで細やかに整えたデザイン
スポーティ:横から見て印象的なのは、フレームレスドアとドア表面の隆起だ。立体的なデザインのサイドスカートには、カイエンエレクトリックではボルケーノメタリック、ターボモデルではハイグロスブラックの塗装が施されている。スポーティなプロポーションを際立たせる2色のコンセプトカラーだ。カイエンのためにデザインされたホイールアーチトリムが、オフロードも走破できるこのクルマのキャラクターを主張している。
デザインをカスタマイズ
無限の可能性:これほどカスタマイズ可能なカイエンもかつてなかっただろう。13色の標準カラー、9種類のホイールデザイン、12種類のインテリアコンビネーション、5種類のインテリア&アクセントパッケージが用意されている。また、ポルシェエクスクルーシブマニュファクチャーチュール 、カラー-オブ-チョイス、特別注文プログラムを利用することで、個々のオプションからユニークな特別リクエストまで、カイエンをさらに個性的にカスタマイズすることができる。
1 特定条件下(CCS急速充電ステーション、400kW超、850V超、520A超、初期充電状態45%~48%、バッテリー温度40°C~42°C)でのカイエンの充電出力。最適条件(CCS急速充電ステーション、390kW超、850V超、520A超、バッテリー温度15 °C、 初期充電状態 9%、残り航続距離 60km未満)での充電率10%から80%への充電プロセスでの直流(DC)に対する最大充電出力。
2 最適条件(CCS 急速充電ステーション、390kW超、850V超、520A超、バッテリー温度 15°C、初期充電状態 9%、残走行距離60km未満)での充電率10%から80%への直流(DC)最大充電出力によるカイエンの充電時間。
3 最適条件(CCS 急速充電ステーション、390kW超、850V超、520A超、バッテリー温度15°C、初期充電状態9%、残走行距離60km未満)での直流(DC)最大充電出力による10 分間の追加充電のカイエンの航続距離(ドイツ仕様の標準装備車両のWLTP 消費量)
燃料消費量
Cayenne Electric
Cayenne Turbo Electric
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22.4 – 20.4 kWh/100 km
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0 g/km
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A Class