ポルシェ・モーメント

ポルシェに捧げた人生 - ヘルベルト・リンゲを偲んで。

   


人生をポルシェに捧げたヘルベルト・リンゲ。ポルシェのためならいつでも、開発担当の役員ミヒャエル・シュタイナーとのインタビューをお願いしたときも、すぐに快く駆け付けてくれた。インタビューを始める前に、両氏はタイカンでヴァイザッハ開発センターをまずドライブ。これはリンゲにとって初めての電動スポーツカーでのドライブだった。1943年にポルシェに入社して以来、彼は新しいポルシェ、そしてその技術に携わってきた。彼はポルシェの初期の職業訓練生の一人としてスタートし、スポーツカーブランドの創成期に大きく貢献し、引退した後までも忠実に会社に尽くした。1950年以降、彼がテストしなかったモデルが工場を去ったことはない。ヴァイザッハをテスト場兼開発センターとしてフェリー・ポルシェに推薦したのもリンゲだった。それがどんな風に具現化されたのかを見ながら、タイカンの助手席に座り、30分予定されていたドライブを1時間以上たっぷり味わってくれたようだ。自宅に戻った後には、役員の一人が自分のために多くの時間を割いてくれた、と嬉しそうな様子だったという。世界中のサーキットでカスタマーチームのお世話をしてレースで優勝し、ハリウッド映画『ル・マン』ではスティーブ・マックィーンのスタントを演じたのも彼だ。そして、そのノウハウを惜しみなく提供し、モータースポーツをより安全なものへと進化させた。そんな風に世界を走り回ってきたリンゲではあるが、その間、常に“ヴァイザッハのヘルベルト”であり続けたくれた。

2024年1月5日、故郷にてヘルベルト・リンゲがこの世を去った。95歳だった。